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 私は航海日誌をつけたりつけなかったりしている。理由は簡単、飽きっぽいからだ。


 逆に言うならば、わざわざ日誌をつけてある時というのは、よっぽど強く印象に残った時、ということになる。


 そう、例えばこの時の日誌のように…




 扉を叩く音がした時、私はまだベッドの中にいた。


 いや、正確に言えばベッドではない。ついそう言ってしまったのは、やはり私がヴェネチアで生まれ育ったからなのだろう。今の私の「ベッド」は藤を編んで作られたもので、およそ西洋の人間が思い描くであろう「ベッド」ではなかった。


 そう、ここは西洋ではない。航海者ならば誰もが憧れる一攫千金の地、香料諸島が存在する東南アジアの、さらにその辺境にある「マニラ」という街に私は来ていた。


 いや、「来ていた」というよりは、むしろ「住み着いていた」といった方が正しいのかもしれない。なぜなら、もう数ヶ月近く私はずっとこの街にとどまり、現地人と生活をともにしていたからだ。


 もちろん、それには理由がある。その理由というのは…いや、もうこれ以上説明するのはやめておこう。さっきからずっと私の部屋の扉を叩いている音。なにしろまずはこれをなんとかしなければ、私のこの頭痛が治まることはないのだから。


 枕元をゴソゴソと手探りしてみると、先日密航者から取り上げたプレゼントされた銀の懐中時計を見つけた。


 私はそれをぐっと握り締めると、扉に向かって…思い切り投げつけた!!



 ゴンッ!!ゴトッ!!



 ひときわ大きな音を立てて扉にぶつかった後、それは床に転がった。


 「おはようございます、船長。昨夜遅くまで船員と酒盛りをしていた割には、どうやら素晴らしいお目覚めを迎えられましたようで」


 副官のハンスだ。


 いつも朝が遅い私に眉をひそめ続けている…面と向かって文句を言わないのは、もちろん私が「船長」だからだ。忘れられることが多々あるものの、一応原則として「船長は副官より偉い」のである…彼だが、どうやら今朝は違うらしい。私を「合法的に」起床させる「何か」を手に入れたのだろう。今は扉の向こうでニヤニヤと笑っているに違いない。


 「ありがとう、ハンス。おかげさまで頭がすごくスッキリしているわ。今ならあなたの日頃の勤務態度をつぶさに思い返して、素晴らしく厳しい査定結果を出せそうよ」


 「それは困りました。では私も、より厳しい勤務態度で臨む必要がありますな。昨夜の酒盛りでお使いになられた費用ですが、これは船長が主催されたものでしたから、全て船長の私財から差し引かせていただきます」


 「…え、ちょ、ちょっとま」


 「それと、いつぞやの海戦で破壊されたために新調させていただいた、船長の用具入れだか衣装箱だかですが、これももちろん差し引かせていただく必要がありますな。加えて言うならば…」


 「わ、わかったわよおっ! いまっ、いますぐ起きるから…っ!!」


 無意識に、私は親指の爪を噛んだ。オスマントルコのガレアスを相手に一歩も退かないこの私でも、自分の副官には敗北せざるを得ない時もあるのだ。


 原則はいったいどこにいったのよ、などとブツブツ文句をいいながらも手早く着替えを済ませた私は、扉の向こう側からとびきりの笑顔を見せてきたハンスから一通の手紙を受けとった。


 ひょいと裏返してみると…そこには意外な差出人名が書かれていた。


 『ジェノヴァの風商会 会長 エデリー』


 私が所属している商会の会長からの手紙だ。商会から手紙が届くこと自体珍しいことだが、それが会長からの手紙となるとなおさらだ。


 急いで封を切って中を覗くと…そこには一枚の紙切れが入っていた。紙切れという言い方はあまり良くないだろうが、しかし本当に、たった一枚の紙切れだけが入っていたのだ。そして、さらにその紙切れには、たった一言だけが書かれているだけだったのである。


 それを見た途端、私はなぜだか胸騒ぎを感じた。何か大切なものがこぼれ落ちていくかのような…そんな胸騒ぎを。


 そこには、こう書かれていた。



 「こちらに戻ってきなさい」





(次回に続くw)






















































おまけ
!!!!!!!!!!
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2008.03.23 Sun l 未分類 l COM(2) TB(0) l top ▲

コメント

No title
次回のオチがとても気になります^^

おまけの絵ですが、頭がパーツの組合せなので、アングルによってどうしても…ですね;;

ちなみに私はこの場合、見なかったことにしてますw
2008.03.24 Mon l シン. URL l 編集
シンさんへ
 いやいや、このお話はオチとかそういう話ではございませんのでw

 あの頭髪消滅を最初見た時は、思わず声を上げてしまうほど驚きましたw
2008.03.24 Mon l エルザ. URL l 編集

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